雪は空中にあります

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流麗な音楽だ

2015年05月18日

第二幕ではセリムがコンスタンツェと登場する。コンスタンツェはセリムの求愛を拒む。ペドリロの勧めによって、セリムはベルモンテをイタリアの建築家として雇う。ある晩、ベルモンテはコンスタンツェを連れ出すことに成功するが、セリムの家来に捕まってしまう。セリムはベルモンテが仇敵の息子であると知り、死刑を命令しようとする。しかし、セリムは二人の悲嘆を聞いて改心し、全員を釈放する。

 ハッピーエンドに終わる分かり易い筋書きである。ビデオブースに移動して早速オペラを見る。指揮者ゲオルク・ショルティが登場して序曲を演奏し始める。モーツァルト独特の軽快で流麗な音楽だ。シンバルとトライアングルがトルコの雰囲気を醸し出す。こうし康泰導遊て散歩の度に図書館を訪ね、二時間余りのオペラ全編を何度か見た。コンスタンツェの召使ブロンデを演じているソプラノ歌手、リリアン・ワトソンの歌がすばらしく、絶世の美人で、いっぺんにファンになってしまった。

 図書館にはCDもあったので借りてきてラジオレコーダーに録音し、家でも時々きくようになった。次第次第に音楽が耳に馴染んでくる。

「なにかいい演奏会ないかしら?」
二月中旬、ある日の夕食時、妻が何枚かの演奏会ちらしを差し出した。横浜そごうに買い物に行ったとき貰ってきたという。芋焼酎のお湯割りを飲みながら一枚ずつ眺めてみる。最後のちらしを見て、目を見張った。
「錦織健プロデュース・オペラ W・A・モーツァルト 後宮からの逃走」
その場で二階のパソコンの前に行き、インターネットで予約した。

 3月7日、午後2時半。曇り空でとて康泰旅遊も寒い。横浜港・山下公園の隣で神奈川県民ホールは広いアプローチ階段の行き着く先に堂々と聳えている。

 2階席の左サイドに座って開演を待つ。やがて指揮者・現田茂夫が現れ、タクトが振り下ろされた。これまで演奏会ではオーケストラの下側、または同じ平面できいていた。今日は下から音が湧きあがるように聴こえてくる。大音量でありながら耳ざわりがよく、実にいい音だ。こんなにいい音のオーケストラをきいたことがない。

 舞台装置は明るい色彩で、トルコの後宮ってきっとこんな雰囲気なんだろうと思う。錦織健扮するベルモンテが左袖から登場し、囚われている恋人への想いを歌い始める。張のある力強いテノールが心地よい。

 今回の公演では、錦織健はセリフを日本語にしてプロデュースしている。
「おい、そこのオッサン、おれはものを訊ねているんだぜ」
というようなあんばいで、とてもオペラが馴康泰旅遊染みやすくなっている。歌・セリフがすべてドイツ語のDVDよりはるかに楽しめる。

 それにしても、指揮者を見ていて驚いた。オーケストラの各パートに的確な指示をしながら、舞台上の歌手全員に歌い出しのタイミングを正確に伝えている。幕間にオーケストラボックスに行き、指揮台を見ると、B4版で数百ページもあるスコア(総譜)が拡げられており、鉛筆であちこちにメモが書いてあった。

 これまでにニューヨークとフィレンツェでオペラを見たことがあるが、単なる物見遊山という感じで、オペラ自体は面白くなかった。今日は事前によく親しんでいたこともあり、初めから終わりまでじっくり楽しむことができた。隣の妻もエンジョイできたようだ。

 6時前に終演となった。山下公園沿いに関内駅に向かい、途中でみつけた居酒屋「北前そば 高田屋」に入る。オペラを見た高揚感を反芻しながら、妻と二人で温かい日本酒を呑んだ。ホタルイカの酢味噌和え、鴨生ハム焼葱巻など、料理も非常に旨い。

 テニスエルボー、遊歩道散歩、図書館と流れに身を任せていたらオペラに辿り着いたような気がする。妻ともどもとても楽しかったので、これからも時々オペラを見たいと思う。次の錦織健のプロデュースが待ち遠しい。



Posted by にテニスエ at 17:21│Comments(0)
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